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※赤字の日はお休みさせていただきます。
最近ではチョコレートにいろいろなものを加えて、美味しさも多様化してきていますが、美味しさの基本となっているのが特有の食感です。口の中でとろりと融ける食感は、油なのにベタついたいやらしさがありません。
その鍵になっている秘密は3つあります。
1.カカオ脂(カカオバター)の脂肪酸組成と分子構造
2.カカオ脂の結晶構造
3.主役はオレイン酸!
…続きを読む…
前回はその1と2に触れましたが、改めてこの3つについて要点を記します。
1.カカオ脂(カカオバター)の脂肪酸組成と分子構造
カカオ脂はグリセリン1分子に脂肪酸3分子がエステル結合していますが、脂肪酸の95%がオレイン酸(34%)、ステアリン酸(35%)、パルミチン酸(26%)の3種類で占めており、グリセリンの水酸基の1と3の位置に飽和脂肪酸のステアリン酸とパルミチン酸、2の位置に一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が配置された分子構造を形成しています。このように、グリセリンの特定の位置に特定の脂肪酸が配置されている油脂(脂質)を構造脂質と称しています。
一般の油脂では脂肪酸の種類が多く、グリセリンとの結合位置がランダムであるのに対して、カカオ脂は構造脂質の代表例です。
2.カカオ脂の結晶構造
このように、カカオ脂は特有の脂肪酸組成と分子構造を有する結果として、融点の異なる6種類(Ⅰ~Ⅵ)の結晶を発現します。
各融点は、Ⅰ型 17.3℃、Ⅱ型 23.3℃、Ⅲ型 25.5℃、Ⅳ型 27.3℃、Ⅴ型 33.8℃、Ⅵ型 36.3 ℃です。
このように、多種類の結晶を生じる性質を多形現象と称しており、多彩でシャープな多形現象を発現する代表選手がカカオ脂です。
最も美味しいのはⅤ型の結晶です。Ⅴ型の結晶は、口に入れた時にとろりと融けて、特有のうまみを醸します。
3.主役はオレイン酸!
この特有の食感を醸成しているのが、オレイン酸です。
オレイン酸は、細胞膜等生体組織や体脂肪など私たちの体を構築している主要な脂肪酸であり、全ての天然油脂に含まれています。
多彩な多形現象を発現したり、しなやかで滑らかな油性感を演出している主役がオレイン酸です。
分子科学における私の専門が「オレイン酸の構造と物性」ですので、要点を解説させていただきます。
オレイン酸の特有な物性は、その化学構造に基因しています。
オレイン酸は、炭素数18の脂肪酸であり、炭化水素鎖の中央(カルボキシル基炭素から数えて9番目、末端メチル基炭素から数えても9番目)にシス型の二重結合を1つ有しています。
その結果、分子全体としては偶数の炭素数であるが、シス型の二重結合の両端に奇数でかつ9個の炭化水素鎖が配置された構造を形成しています。
炭化水素鎖の偶数は界面の秩序性を高め、奇数は運動性を高めます。
秩序性と運動性(ダイナミクス)の関係は、構造(コンフォメーション)や物性の発現の基本であり、この分子物性を高度にアレンジした分子集合体が超分子です。
RIMソープは、この超分子物性を活かすことによって、高い洗浄力と保護膜形成能の同時実現を可能にしました。
(株)構造機能科学研究所
代表取締役 鈴木 正夫