2016.09.03
前回の記事に続き「羊水の不思議」についてご案内いたします。
皆さんは胎児は10ケ月もの間、羊水にずっと浸かっているのに皮膚は何故ふやけないのか、疑問に思われたことはないでしょうか?
「お風呂に長めに浸かっていたら皮膚がふやけた」「川遊びをしていたら皮膚がふやけた」と言う経験は多くの皆さんがされていることと思います。
なのに、10ヶ月も羊水に浸かりっぱなしでいた胎児の皮膚が、生まれてくるときにはつややかであるのは不思議ですね!?
その秘密は、「浸透圧」と「胎脂(胎児の皮脂膜)」にあります。
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先ず、「浸透圧」についてご説明いたします。
塩分やミネラルが多く含まれる身体が真水の中に入ると、両者の塩分・ミネラル濃度を均等にしようとする働きが生じます。
身体の塩分やミネラル成分が真水のほうへ抜け、逆に真水が皮膚を通して身体の中へ浸透して皮膚がふやけます。
これが浸透圧の原理です。
ところが、羊水と胎児の体液の成分や塩分濃度(0.85%)はほとんど同じですので同じ浸透圧を持っており、浸透圧の原理が働かず、40週間もの間、羊水に浮かんでいても赤ちゃんの皮膚はふやけることなくツヤツヤの身体で生まれてくるというわけです。
また、海水の成分とも似ていますので、海水だと、普通のお風呂に入ったときほど指先はふやけません。
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※参考※
<人体液と羊水、海水との主要元素の成分構成と上位8元素の順位>
◎人体: H, O, C, N, Na, Ca, P, S
◎羊水: H, O, Na, Cl, C, K, Ca, Mg
◎海水: H, O, Na, Cl, Mg, S, K, Ca
※H水素、O酸素、C炭素、N窒素、Naナトリウム、Caカルシウム、Pリン、Sイオウ、Cl塩素、Kカリウム、Mgマグネシウム
<主な成分の含有量/乾燥粉末100g>
人体:ナトリウム34.40g、カリウム1.70g、カルシウム1.00g
羊水:ナトリウム34.50g、カリウム1.70g、カルシウム1.00g
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次に重要なのは、「胎脂」の存在です。胎児における皮脂膜を「胎脂」と称しています。
胎児は、しっかりした皮脂膜「胎脂」という脂で身体中を包んで皮膚を保護しています。
胎脂が羊水をはじいて、胎内でふやけないようにバリアとして働いています。
(株)構造機能科学研究所
鈴木 正夫