2016.04.29
40年前までは殆どなかったアレルギーが先進国において増加の一途にあり、罹患率は約4割に達しています。
その原因として諸説挙げられてきておりますが、近年クローズアップされているのが経皮感作です。
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経皮感作とは、皮膚からアレルギーの原因物質(抗原/アレルゲン)が体内に入りアレルギー体質になることです。
経皮感作については、既にピーナッツアレルギーでは指摘されていましたが、経皮感作の因果関係を明確にしたのが「旧茶のしずく石鹸」です。
この石鹸には、保湿効果や泡立ちを良くするために加水分解コムギ(グルパール19S)が使用されていました。
この石鹸を使用した際に加水分解コムギが皮膚から侵入して、食物アレルギー等、種々のアレルギーを惹起し、重篤な全身性ショック症状(アナフィラキシー)も起きることとなりました。
本件について、アトピー性皮膚炎等アレルギーにおけるスキンケアの重要性を以前から指摘してきている京都大学皮膚科教授(現在:滋賀県立成人病センター)の宮地良樹先生は次のように述べています。
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(アレルギーの臨床34(10)、2014)
『社会問題ともなった「旧茶のしずく石鹸」事件は、患者さんには申し訳ないが、いわば壮大な社会実験となって、経皮感作の重要性を確固たるものにしたといえる。
食物アレルギーにおける経皮感作の解明は、その発症予防におけるスキンケアの重要性を改めて浮き彫りにした。アトピー性皮膚炎における皮膚バリア破綻が長らく指摘され、フィラグリン遺伝子異常の発見がさらにそのコンセプトを確立させたが、今後はスキンケアのみではなく、フィラグリンの誘導を含めた新たな皮膚バリア機能回復戦略が創薬の焦点になると思われる。
さらにアレルギーマーチによる喘息発症予防までを見据えた戦略が、次の皮膚アレルギー治療のストラテジーになるものと思われる。』
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抗原が「いつ」「どこから」入り込むかがアレルギー発症の分かれ道であり、そこに前回ご案内した制御性T細胞(Tレグ)が深く関わっていることが明らかになってきています。
次回に続きます。
(株)構造機能科学研究所
鈴木 正夫